
毎日捨てている卵の殻、実はもったいない
朝食の目玉焼き、お菓子作り、料理の下ごしらえ……私たちの食卓に欠かせない卵。でも、卵を使った後の殻はどうしていますか? ほとんどの方が「ゴミ箱へポイ」ではないでしょうか。
実は、日本国内だけで年間約25万トンもの卵殻が廃棄されているといわれています。これは、日本人が年間に消費する卵が約250億個にものぼるため。1個あたりの殻の重さはわずか約10gですが、積もり積もれば膨大な量になります。 しかし近年、この「捨てられる卵の殻」が、優れた素材として注目を集めているのをご存知でしょうか? 実は卵の殻には、環境に優しく、さまざまな製品に生まれ変わる可能性が秘められているのです。
卵殻の成分と構造
卵の殻は、約94%が炭酸カルシウムでできています。残りの6%はタンパク質や微量のミネラル。この炭酸カルシウムは、石灰石やサンゴと同じ成分で、自然界に豊富に存在する物質です。
卵の殻の最大の特徴は、その「多孔質構造」にあります。殻の表面には無数の小さな穴が開いており、卵が呼吸できるようになっています。この構造が、後述するさまざまな応用を可能にしているのです。
身近な活用法・昔ながらの知恵
卵の殻の再利用は、実は昔から行われてきました。おばあちゃんの知恵袋的な活用法をいくつかご紹介しましょう。
家庭菜園の肥料として
卵の殻を砕いて土に混ぜ込むと、カルシウム補給になり、土壌の酸性度を調整する効果もあります。特にトマトやピーマンなどの野菜栽培に効果的。細かく砕くほど、植物が吸収しやすくなります。
掃除用研磨剤として
細かく砕いた卵の殻は、優しい研磨剤になります。鍋やフライパンの焦げ付き、水筒の内側の茶渋など、傷をつけずに汚れを落とすことができます。少量の水と一緒に使うのがコツです。
消臭剤としての活用
卵の殻の多孔質構造は、臭いを吸着する性質があります。乾燥させて砕いた殻を布袋に入れて、冷蔵庫や下駄箱に置くと消臭効果が期待できます。
産業・製品への応用例
昔ながらの知恵だけでなく、現代では卵の殻が産業分野でも幅広く活用されています。
建材・インテリア分野
エコ塗料の原料
卵殻パウダーは、塗料の原料として利用されています。炭酸カルシウムを主成分とする卵の殻は、壁材や塗料の充填材として最適。化学合成された材料と比べて環境負荷が少なく、調湿効果も期待できます。
壁材・タイルへの活用
卵の殻を混ぜ込んだエコ壁材やタイルも開発されています。独特の質感と温かみがあり、デザイン性も高いと評価されています。
食品・健康分野
カルシウムサプリメントの原料
卵の殻から抽出された炭酸カルシウムは、吸収率が高く、サプリメントの原料として広く使われています。天然由来で安全性が高いことも大きなメリットです。
食品添加物としての利用
食品業界では、卵殻カルシウムが栄養強化剤として利用されています。パンやお菓子、飲料など、さまざまな食品に添加され、カルシウム補給に役立っています。
環境・農業分野
土壌改良材
農業分野では、卵の殻を粉砕したものが土壌改良材として活用されています。酸性土壌を中和し、カルシウムを補給することで、作物の生育を促進します。
水質浄化材
卵殻の多孔質構造を活かして、水質浄化材としての研究も進んでいます。重金属やリン酸を吸着する能力があることが分かってきました。
肥料としての再利用
卵の殻を含む食品廃棄物を発酵させて堆肥化し、有機肥料として循環させる取り組みも広がっています。
先端技術への応用
バイオプラスチックの原料
最先端の研究では、卵の殻をバイオプラスチックの原料として活用する試みが進んでいます。石油由来のプラスチックに代わる、環境に優しい素材として期待されています。
吸着剤としての利用
卵殻の多孔質構造を活かし、水や空気中の有害物質を吸着する材料としての研究が進められています。特に重金属の除去に効果があることが確認されています。
化粧品原料
卵殻膜(殻の内側の薄い膜)には、美容成分が豊富に含まれており、化粧品の原料として注目されています。コラーゲンやヒアルロン酸などの成分が含まれ、肌のハリや潤いをサポートします。

注目の製品・取り組み事例
実際に卵の殻を活用した製品や取り組みをいくつかご紹介します。
卵殻を使ったエコ食器
ある企業では、卵の殻を混ぜ込んだバイオマス樹脂で食器を製造しています。石油由来のプラスチック使用量を削減しつつ、強度と耐久性も確保。環境に配慮した製品として、採用が広がっています。
卵殻チョークの開発
学校で使うチョークの原料としても、卵の殻が活用されています。従来の石膏チョークと比べて粉が出にくく、書き心地も滑らか。アレルギーのある子どもたちにも優しい製品として評価されています。
当社の事例
当社では、“未活用資源×天然ゴム”による新素材開発ブランド「Rebbur(リバー)」を立ち上げました。このブランドでは、食品産業で廃棄されがちな“未活用材”を用い、天然ゴムと混合して新たな素材を作り出しています。なかでも「卵の殻×天然ゴム」から生まれた「エッグホワイト」というシリーズは、卵の殻をふんだんに活用しています。
なお「Rebbur(リバー)」は、2025年のGOOD DESIGN AWARDにおいて、「廃棄物の削減という目的にとどまらず、自然素材の価値を可視化する素材設計として、社会性と美観を両立したアプローチである」として評価を受けました。
卵殻は「ゴミ」ではなく「資源」
卵の殻は、これまで当たり前のように捨てられてきましたが、実は多くの可能性を秘めた優れた素材です。家庭での小さな活用から、産業レベルでの製品化まで、その応用範囲は驚くほど広がっています。
今後、技術の発展とともに、卵の殻を活用した新しい製品やサービスがさらに増えていくことでしょう。バイオプラスチックや先端材料への応用など、私たちの暮らしをより豊かに、そして地球環境に優しくする可能性を秘めています。